日本人が昔から着てきた和服は、実は胸が大きいとさまにならないということをご存知でしょうか。
特に若い未婚の女性の場合、帯を「胸高」と言って高い位置で結ぶため、豊満なバストの持ち主はさらしをきつく巻いて、わざわざ潰していたのだそうです。
日本女性はバスト大きく見せたがらない?
現代でも着物を着る時には和装用のバストをホールドしないスポーツブラのような下着をつけるのが普通です。
そのせいか、日本女性はバストへの関心が薄く、公共の場で授乳したり、都市部以外では年配の女性がスリップや腰巻き一枚で表へ出ることもめずらしくありませんでした。
当然、「バストアップしたい」「形よく見せたい」という発想はなく、大きなバストがかえってコンプレックスになることもあったようです。
また、ブラジャー自体は「乳房バンド」などと呼ばれて大正時代からあったようですが、日本で製造されるようになったのは戦後の1948年。ワコールの前身である和江商事がブラパッドを内蔵する袋のついたブラジャーを開発・販売したのが最初です。
とは言え、当初のブラジャーはバストをホールドして美しく見せるよりも、やはり邪魔にならないように、目立たないようにという目的で使われていたようです。
マリリン・モンローとオードリー・ヘップバーンも見る日本人女性のバストの意識
そんな日本女性の、バストや体への意識がうかがえるよい例を紹介しましょう。
往年の映画スター、マリリン・モンローとオードリー・ヘップバーンに関するお話です。
死後50年を経てもなお、彼女を超えるセックス・シンボルは現れていないと言われるマリリン・モンローは日本でも男性に絶大な人気がありました。
現代でもそのセクシーな表情や抜群のプロポーションは充分魅力的ですよね。
ところが、女性受けは今一つ。スレンダーな体つきに清楚なたたずまいから「妖精」と呼ばれたオードリー・ヘップバーンの方が注目度は断然上でした。
「ローマの休日」で見せたショートカットや「麗しのサブリナ」で履いていたパンツがサブリナパンツと呼ばれて大流行したことからもうかがえます。
もちろん彼女の魅力もまた不変のものですが、モンローよりも支持された理由は、「ヘップバーンは清潔で可愛らしいけど、モンローは“いやらしい”感じがする」ということだったとか。
モンローの、その豊かなバストやヒップ、「女性としての肉体美」を強調するような衣装や振る舞いが、当時の日本女性には「露出過多」「はしたない」と感じられたのかもしれませんね。
もう一つ、腰巻きや襦袢といった着物用の下着は自分で縫うことができますが、ブラジャーはそうもいかないということもありました。
女性の下着は人目に触れてはならないもの、とされていた時代のことです。例え同性であっても、自分が身につける下着を他人の手を介して買うことに抵抗がある人が多く、正しいバストサイズを測ってもらうなんて考えられなかったことでしょう。恥ずかしくて下着売り場に足を踏み入れることすらできないという人も実際にいたそうです。
体に合わないブラジャーでは美しいバストラインは望めません。日本人の平均サイズがAカップだった時代が長かったのは、食生活の影響もありますが、こうした国民性や知識不足のせいもあったと考えられます。
ブラジャーの補正機能が注目された時期は1990年代
ブラジャーの補正機能が注目されるようになったのは90年代以降と、実はごく最近のことです。
火をつけたのは外国製の美しいデザインと補正機能を兼ね備えた下着でした。日本製の下着ではAカップなのに、外国製のものならCカップになった…という話がファッション誌などで取り上げられ、一気にブームになったのです。
それに伴い、国内のメーカーも研究を進め、外国製の利点に「日本人の体型に合う」というオプションをつけた製品が続々と発売されました。
体に合ったサイズのブラジャーを正しくつけることでバストは変わっていく…こうした意識が一般的になり、ブラジャーそのものが進化した結果、日本女性のバストサイズもアップしてきたのです。
現在の平均がB~Cカップと成長を遂げたのも、体格の向上に加えて下着の重要性が認識されるようになったからと言えるでしょう。